日本における頭痛の現状と悩み
頭痛は「よくある症状」と軽く見られがちですが、片頭痛を持つ人は発作時に仕事や家事、学業に大きな支障をきたします。日本頭痛学会の資料でも、片頭痛のある方の多くが日常生活への支障を感じていることが示されています。にもかかわらず、「頭痛くらいで病院に行くのは恥ずかしい」「我慢すれば治る」と放置している人が少なくありません。
日本で特に多い頭痛は次の3つです。
- 片頭痛——ズキズキと脈打つような痛みが数時間から数日続き、吐き気や光・音への過敏を伴う。月に数回、予定を潰されることも
- 緊張型頭痛——頭全体が締め付けられるような鈍い痛み。デスクワークやスマホの使いすぎによる首・肩こりとセットで起こりやすい
- 群発頭痛——片側の目をえぐられるような激痛が数週間から数カ月にわたって毎日起こる。男性に多い
さらに、天気や気圧の変化で悪化する「気象病」タイプの方も多く、特に5月の気圧乱高下シーズンはめまいと片頭痛を併発する「前庭性片頭痛」の相談が増える傾向にあります。
片頭痛治療の最新事情:CGRP関連薬とナルティーク
片頭痛治療は大きく「発作が起きた時の急性期治療」と「発作を起こりにくくする予防治療」の二本柱です。従来は鎮痛薬(NSAIDs)やトリプタン製剤が中心でしたが、近年、片頭痛の発症に関わるCGRPという物質に着目した治療薬が登場し、治療の選択肢が広がっています。
2025年12月、日本で画期的な新薬が発売されました。経口CGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠75mg」(一般名:リメゲパント)です。この薬の特徴は、急性期治療と発症抑制の両方に使える日本初の経口薬であること。これまで「痛いときに飲む薬」と「予防する薬」を別々に使い分ける必要がありましたが、ナルティークは1種類で両方の役割を担えます。
赤坂おかだ頭痛クリニックでも処方が始まっており、「ナルティークについて知りたい」「自分に合うか相談したい」という声に応えています。ただし、すべての患者さんに合うわけではなく、症状の程度や頻度、持病、これまでの治療歴によって適切な薬は異なります。
頭痛外来・頭痛センターの選び方
日本には「頭痛外来」を標榜するクリニックが各地にありますが、どこに相談すればいいか迷う方も多いでしょう。目安は以下のとおりです。
| 医療機関の種類 | 特徴 | こんな人に向いている | 受診の目安 |
|---|
| 脳神経内科・頭痛外来 | 一次性頭痛の診断・薬物療法が中心 | 片頭痛や緊張型頭痛で悩んでいる | 月2回以上の頭痛、市販薬が効かない |
| 頭痛センター(総合病院) | 脳神経外科・眼科・耳鼻科などと連携し二次性頭痛まで対応 | 「脳の病気では?」と不安がある | 突然の激しい頭痛、意識障害を伴う場合 |
| かかりつけ医 | 日常的な相談がしやすい | 症状が軽く、まずは相談したい | 頭痛が続くが日常生活に大きな支障はない |
国立病院機構大阪医療センターの頭痛センターのように、くも膜下出血や脳腫瘍などの二次性頭痛を迅速に診断できる総合病院も増えています。緑内障、副鼻腔炎、歯性上顎洞炎など、頭痛以外の病気が原因のケースもあるため、原因不明の頭痛が続く場合は専門的な検査を受ける価値があります。
自分でできるセルフケアと受診のタイミング
頭痛とうまく付き合うには、薬だけでなく生活習慣の見直しも欠かせません。
まずは頭痛ダイアリーをつけることから始めましょう。いつ・どんな痛みか・どれくらい続いたか・何を食べたか・睡眠時間・天気や気圧などを記録すると、自分の頭痛のパターンが見えてきます。市販薬を飲む前に、カフェインの摂りすぎや寝不足、ストレスが引き金になっていないかを確認するのも有効です。
受診を検討すべきサインとして、次のようなものがあります。
- ズキズキして吐き気がある、光や音がつらい
- 月に2回以上頭痛がある、または頭痛で予定を崩す
- 市販薬が効かない、効く量が増えてきた
- 痛み止めを月10日以上飲んでいる
- 朝起きた時から痛い、首こり・肩こりとセットでつらい
- 初めて経験する強い頭痛で不安がある
特に「これまで経験したことのない激しい頭痛」「突然起こった頭痛」「発熱や意識障害を伴う頭痛」は危険なサインです。くも膜下出血や髄膜炎などの可能性があるため、迷わず医療機関を受診してください。
治療費の目安と費用サポート
頭痛治療にかかる費用は、保険診療が基本です。初診料と検査費、薬代を含めると、一般的なクリニックの初診で数千円台が目安となります。CGRP関連抗体薬の予防注射などは高額になりがちですが、多くの場合、健康保険と高額療養費制度の対象となるため、自己負担額は所得に応じて上限が設定されます。気になる場合は、受診前に医療機関の窓口や保険者に確認するのが確実です。
まずは一歩:頭痛を我慢しない選択を
「薬を飲んでなんとか出勤している」状態は、医学的に見ればパフォーマンスが著しく低下している状態です。痛みを「我慢できるレベル」に抑えるのではなく、頭痛を忘れて仕事に集中できる日を増やす——それが現代の頭痛治療の目指すところです。
日本には、片頭痛の急性期治療と予防の両方に対応できる医療機関が都市部を中心に着実に増えています。あなたの頭痛が「ただの頭痛」かどうかは、専門医にしか判断できません。市販薬に頼り続ける前に、一度頭痛外来の扉を叩いてみてはいかがでしょうか。適切な診断と治療で、頭痛のない日々は必ず増やせます。