4人に1人が抱える慢性頭痛の実態
日本の全国調査では、緊張型頭痛が約15.6%、片頭痛が約8.4%と報告されており、合わせるとおよそ4人に1人が慢性的な頭痛を抱えている計算になります。とくに片頭痛は20代から40代の女性に多く、有病率は男性の約3倍に達します。それにもかかわらず、医療機関を受診する人は限られていて、多くの人が市販薬でやり過ごしているのが現状です。
診療現場では、こんな声がよく聞かれます。
「朝起きた瞬間から頭がギュッと締め付けられる。デスクワークが長引くと余計に重くなる」
「月に何度かズキズキと脈打つ頭痛が来て、光と音が耐えられなくなる。吐き気も伴う」
「市販の痛み止めをほぼ毎日飲んでいるのに、最近効きにくくなってきた」
いずれも珍しいケースではありません。働く世代に共通する悩みですが、実は頭痛にはタイプがあり、それぞれに合った対処法が異なります。ここを間違えると、薬に頼る回数だけ増えてしまうのです。
頭痛は大きく「緊張型頭痛」「片頭痛」「危険な頭痛」の3つに分けられます。緊張型頭痛は頭全体が締め付けられるような鈍い痛みで、長時間のデスクワークやスマホ操作による首肩のこりが主な原因とされています。片頭痛はこめかみあたりが脈打つように痛み、吐き気や光・音・においへの敏感さを伴うのが特徴です。発作の前に、目の前にギザギザした光が現れる「閃輝暗点」を経験する人もいます。
そして、見逃せないのが危険な頭痛です。「今までで最悪」と感じる突然の激しい頭痛、発熱と首のこわばりを伴う頭痛、ろれつが回らない・手足がしびれる症状を伴う頭痛は、くも膜下出血や脳卒中、髄膜炎の可能性があります。こうした場合は自己判断せず、すぐに救急要請または救急外来を受診してください。
タイプ別の対処法と市販薬の選び方
自分の頭痛のタイプが分かったら、対処法を選びます。
緊張型頭痛には、後頭部の生え際にある「天柱」「風池」、手の甲の「合谷」、頭頂の「百会」といったツボ押しがよく取り入れられています。首や肩の血行を促すことで、筋肉のこりから来る痛みを和らげる効果が期待できます。こまめに姿勢を正し、1時間に一度は席を立って首を回す習慣も有効です。
片頭痛の場合、痛みが始まったら静かな暗い部屋で休息し、冷却シートをこめかみに当てるのが有効です。薬は痛みが強くなる前、早い段階で飲むほうが効果的です。
市販薬を選ぶときのポイントも押さえておきましょう。ロキソニンSはロキソプロフェンを主成分とし、市販薬の中では特に効き目が強く速いのが特徴です。歯痛や生理痛、発熱を伴う頭痛に適しています。バファリンAはアスピリンを主成分とし、胃を守る成分が配合されているため、胃が弱い人に向いています。イブは頭痛のテレビCMでおなじみですが、成分の配合バランスが異なるため、自分の症状に合うものを選ぶとよいでしょう。
ただし、どれを選ぶにしても使い方には注意が必要です。単一成分の鎮痛薬を月に15日以上、トリプタン製剤などを月に10日以上使っていると、かえって頭痛が増える「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」を招くことがあります。市販薬の使用頻度が上がってきたら、それは治療方針を見直すサインです。
| 選択肢 | 例 | 費用のイメージ | こんな人に向く | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | ロキソニンS、バファリンA | 手頃な価格で購入できる | 月数回の軽い頭痛 | すぐに手に入る | 使いすぎるとMOHのリスク |
| 医療機関の処方薬 | トリプタン製剤など | 公的医療保険の自己負担額 | 発作が重く動けない | 診断に基づいた治療を受けられる | 受診の予約が必要 |
| CGRP関連注射薬 | エムガルティなど | 3割負担で1本1万円台前半 | 月5回以上頭痛がある人 | 月1回の注射で発作を減らせる | 注射部位の赤みが出ることがある |
| 非薬物療法 | ツボ押し、冷却、休息 | 自宅で手軽に取り組める | 軽度の緊張型頭痛 | 副作用の心配が少ない | 効果には個人差がある |
医療機関での治療と受診の目安
市販薬で対応しきれない頭痛は、医療機関での治療が選択肢に入ります。受診の目安は、頭痛が週に2回以上ある、鎮痛薬を月に10日以上飲んでいる、頭痛のせいで仕事や家事に支障が出ている、といった状態です。何科にかかればよいか迷ったら、脳神経内科か、近年各地で増えている「頭痛外来」を標榜するクリニックが適しています。
実際、頭痛外来のあるクリニックでは、問診と頭痛日誌をもとにタイプを診断し、市販薬では不十分な人にはトリプタン製剤の処方や予防療法を提案します。東京都内のある頭痛外来ではオンライン診療にも対応し、遠方から通院していた患者の負担を軽くしています。地方では脳神経内科が近くにないケースも多いため、オンライン診療を導入する医療機関が増えているのは心強い流れです。
30代の会社員Aさんは、月に10回近く片頭痛の発作があり、仕事を休むことも珍しくありませんでした。頭痛外来を受診し、頭痛日誌を2週間つけたところ、寝不足の翌日と気圧の変化が重なった日に発作が起きやすいことが判明。睡眠時間の確保と予防薬の併用で、発作の回数は半分以下に減ったといいます。近年はCGRP関連の注射薬や、急性期治療と発症抑制の両方に対応する経口薬など、治療の選択肢も広がっています。
頭痛日誌から始める行動ガイド
これから頭痛と付き合っていくために、まずは頭痛日誌をつけてみてください。痛みが起きた日時、場所、程度、持続時間、その日の睡眠や食事、飲んだ薬を記録するだけで、自分の頭痛のパターンが見えてきます。この記録は医師との相談でも大きな助けになります。
そのうえで、次のステップを試してみてください。
- 危険な頭痛のサインがないかを確認する
- 市販薬の成分と使用頻度を把握し、月10日を超えないようにする
- 2週間以上続く頭痛や頻度が増えている場合は、近くの頭痛外来や脳神経内科を受診する
- 医師と相談しながら、予防療法や新薬を含めた治療方針を決める
地域の医療機関を探すときは、日本頭痛学会のウェブサイトや自治体の情報が参考になります。「頭痛外来 地域名」のように検索すると、近隣の対応医療機関が見つかります。頭痛は我慢するものではなく、適切にコントロールできる症状です。タイプを知り、正しい対処法を選び、必要なときは専門家の力を借りる。痛みに費やす時間を減らすために、今日からできることから始めてみてはいかがでしょうか。