日本人に多い頭痛のタイプと、その背景にある事情
頭痛と一口に言っても、その種類は大きく異なります。日本で特に多いのは「緊張型頭痛」と「片頭痛」の二つです。
緊張型頭痛は、デスクワークやスマホの長時間使用による首・肩の筋肉のこりが原因で起こります。頭全体がギューッと締め付けられるような痛みが特徴で、夕方にかけて悪化することが多い傾向にあります。日本のオフィスワーカーに多いのは、長時間同じ姿勢を続ける働き方と深く関係しているためです。
一方、片頭痛はズキズキと脈打つような痛みで、吐き気や光・音への過敏を伴います。日本頭痛学会の診療ガイドラインによると、国内の年間片頭痛有病率は8.4%で、女性に多く見られます。片頭痛は単なる「痛み」ではなく、神経の炎症が関与する疾患です。天気の変化、気圧の低下、睡眠不足、ストレス、生理周期などが誘因になります。
日本の場合は特に「気圧」が大きなトリガーになります。梅雨や台風シーズンに頭痛が悪化する「天気痛」を訴える人は国内に約1000万人以上いるとされ、低気圧が近づくと前日から頭が重くなるというパターンを経験する人が少なくありません。
さらに注意したいのが「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」です。市販の鎮痛薬を月に10日以上、3か月以上続けて飲むと、逆に頭痛が慢性化してしまうケースがあります。「痛くなったら薬を飲む」という習慣が、かえって頭痛を悪化させている可能性もあるのです。
頭痛の種類別に見る、自分に合った対処法
頭痛へのアプローチは、種類によって変わります。ここでは代表的な頭痛タイプごとの対処法を整理します。
緊張型頭痛への対策
緊張型頭痛は筋肉の緊張が根本原因なので、血流を改善することが基本です。座ったままできる簡単なストレッチとして、次のようなものがあります。
- 首を左右にゆっくり倒し、側面の筋肉を伸ばす
- 両肩を耳に近づけるように持ち上げて5秒キープし、ストンと力を抜く
- 両手を後ろで組み、胸を開くようにして背中を伸ばす
ディスプレイの位置を目の高さに合わせ、1時間に1回は立ち上がって体を動かす習慣も効果的です。特に在宅勤務が定着した今、自宅の作業環境を見直すだけでも頭痛の頻度が変わることがあります。
片頭痛への対策
片頭痛の場合は、発作中のストレッチや運動は逆効果になることがあります。暗い静かな部屋で安静にし、痛みのピークをやり過ごすのが基本です。冷却シートや氷のうでこめかみや後頭部を冷やすと、脈打つような痛みが和らぐことがあります。
日常的な予防としては「頭痛ダイアリー」の活用が推奨されています。発症日時、痛みの程度、天気、睡眠時間、食事、生理周期などを記録することで、自分特有のトリガーが見えてきます。無料のスマートフォンアプリも複数あり、診察の際に医師へ見せる資料としても役立ちます。
気圧による頭痛への対策
天気痛に悩む人は、気圧の変化を事前に察知して早めに対処することが重要です。天気予報アプリに気圧情報が表示されるものもあり、低気圧の接近が予想される日は、無理な予定を入れず、耳まわりのマッサージや軽いストレッチで体をほぐしておくと症状が和らぎやすくなります。
受診を考えるタイミングと、頭痛外来の選び方
「市販薬でなんとかしている」という状態が続いているなら、一度は医療機関の受診を検討してみてください。特に次のようなケースでは、早めの受診をおすすめします。
- 月に2回以上の頭痛があり、予定を崩すことがある
- 市販薬が効かない、または効く量が増えてきた
- 鎮痛薬を月に10日以上服用している
- 朝起きた時から痛む、首こり・肩こりとセットでつらい
- 生理前後に悪化する
- 天気や気圧、寝不足で悪化しやすい
受診先としては「頭痛外来」「脳神経内科」「脳神経外科」が適しています。頭痛専門医の資格を持つ医師がいるクリニックであれば、より精度の高い診断と治療が期待できます。かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらう方法もあります。
なお、以下のような症状がある場合は、迷わず救急外来を受診してください。脳卒中や髄膜炎など、命に関わる病気の可能性があります。
- これまで経験したことのない激しい頭痛が突然始まった
- 頭痛に加えて意識がもうろうとする、手足の麻痺、ろれつが回らない
- 頭痛とともに38℃以上の発熱と首のこわばりがある
- 頭を打った後の頭痛で、嘔吐や意識障害を伴う
治療の選択肢と費用の目安
頭痛の治療は、大きく「急性期治療」と「予防治療」に分かれます。近年は選択肢が大幅に広がっています。
急性期治療では、トリプタン製剤が片頭痛の発作時に効果を発揮します。ジェネリック医薬品を使えば1錠あたりの自己負担(3割負担)は数十円程度に抑えられるものもあります。
予防療法は、月に2回以上の発作がある場合や、日常生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合に検討されます。2021年以降、CGRP関連抗体薬という新しいクラスの予防薬が日本でも使用できるようになり、月1回の皮下注射で発作頻度を大幅に減らす効果が期待できます。また2025年には、急性期と予防の両方に使える経口薬「ナルティーク(リメゲパント)」が発売され、これまでトリプタンが使えなかった人にも新たな選択肢が生まれました。
受診費用の目安(3割負担)は、以下の通りです。
| 診療内容 | 費用の目安(3割負担) |
|---|
| 初診(診察のみ) | 約2,000〜3,000円 |
| 再診 | 約1,000〜1,500円 |
| MRI・CT検査あり | 約5,000〜1万円 |
| トリプタン製剤(1錠) | 約20〜140円 |
| CGRP抗体薬(月1回注射) | 約1万2,000〜1万3,000円 |
CGRP抗体薬は効果が高いものの、月額1万円以上の負担になります。ただし、加入している健康保険によっては「付加給付」という独自の医療費助成制度があり、自己負担額を大幅に減らせる場合があります。勤務先の健保組合に確認してみるとよいでしょう。
オンライン診療の活用と、継続的なケアのコツ
頭痛の治療は、一度受診して終わりではありません。薬の効果確認や処方の調整を続けながら、自分に合う治療法を見つけていくプロセスが重要です。
近年はオンライン診療に対応する頭痛外来も増えています。初回の診察は血圧測定や血液検査が必要なため対面での受診が基本ですが、治療方針が決まった後のフォローアップであれば、オンライン診療で対応してくれるクリニックも多くあります。仕事帰りや休日を利用して通えるクリニックを選ぶことで、継続的な治療がしやすくなります。
東京・赤坂の頭痛専門クリニックのように、平日20時まで診療しているところもあります。無理のない通院計画を立てられるかどうかも、クリニック選びのポイントです。
生活習慣の見直しが、頭痛の頻度を変える
治療と並行して、日常生活の見直しも頭痛予防には欠かせません。
睡眠は、毎日同じ時間に起きることを意識してみてください。休日に寝だめすると、かえって頭痛を誘発することがあります。食事は、空腹による低血糖も頭痛の引き金になるため、規則正しい間食を心がけましょう。
水分補給も重要です。カフェインやアルコールではなく、常温の水をこまめに摂ることで血流が改善され、頭痛の予防につながります。
ストレスとの付き合い方も、頭痛管理の大きな要素です。仕事の締め切りや人間関係のプレッシャーがたまると、無意識のうちに首や肩に力が入り、緊張型頭痛を引き起こします。週に1回は、何もしない時間を作るなど、自分なりのリセット方法を持っておくとよいでしょう。
頭痛は我慢するものではありません。適切な診断と治療でコントロールできる疾患です。「痛みを我慢できるレベルにする」のではなく、「頭痛を忘れて日常に集中できる日を増やす」ことを目標に、自分に合った対処法と医療のサポートを見つけていってください。まずは頭痛ダイアリーを1週間つけて、自分の頭痛のパターンを観察することから始めてみてはいかがでしょうか。