なぜ日本人に頭痛が多いのか
日本の気候と生活習慣には、頭痛を引き起こす要素が数多く潜んでいます。特に梅雨や台風シーズンの気圧変化は、多くの人が「天気痛」と呼ぶ頭痛の引き金になります。加えて、長時間のデスクワークによる首・肩の筋肉の緊張、慢性的な睡眠不足、ストレス社会と呼ばれる働き方環境も、頭痛の頻度を高めています。
頭痛には大きく分けて、病気が原因ではない「一次性頭痛」と、脳出血や髄膜炎など重大な疾患が隠れている「二次性頭痛」があります。一次性頭痛には片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3種類があり、日本人に多いのは片頭痛と緊張型頭痛です。
厚生労働省の調査によると、片頭痛の有病率は成人の約8.4%。女性では男性の約3倍というデータもあります。片頭痛は「ただの頭痛」ではなく、吐き気や光・音への過敏を伴う神経疾患です。それにもかかわらず、片頭痛患者の8割以上が医療機関で治療を受けていないのが現状です。
頭痛のタイプ別チェックと対処法
片頭痛の特徴
- 片側がズキズキと脈打つように痛む
- 吐き気や嘔吐を伴う
- 光や音に敏感になる
- 痛みは4〜72時間続く
- 月経周期、寝不足、気圧変化、赤ワインなどが誘因になる
片頭痛は、三叉神経の活性化によってCGRPという炎症性物質が放出され、血管が拡張することで発生します。市販の鎮痛薬でもある程度は抑えられますが、重要なのは「痛みが強くなる前に早めに飲む」こと。発作の初期に服用することで、CGRPの放出を抑えられます。
緊張型頭痛の特徴
- 頭全体を締め付けられるような鈍い痛み
- 首や肩のこりを伴う
- 目の疲れ、倦怠感がある
- 長時間のデスクワークやストレスで悪化する
緊張型頭痛は、首・肩の筋肉の緊張が続くことで血流が低下し、発痛物質が蓄積して起こります。デスクワーク中の姿勢を見直し、1時間に一度は肩を回すなどして筋肉をほぐすことが予防につながります。
危険な頭痛のサイン
以下のような症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。
- 今まで経験したことのない突然の激しい痛み
- 発熱や意識障害を伴う頭痛
- 手足のしびれや言葉のもつれがある
- 朝起きた時から常に痛む
- 市販薬が効かず、痛みが日に日に強くなる
市販の頭痛薬の選び方
ドラッグストアには数多くの頭痛薬が並んでいますが、成分で選ぶのが基本です。主な市販薬を比較しました。
| 製品名 | 主成分 | 特徴 | こんな人におすすめ | 注意点 |
|---|
| ロキソニンS | ロキソプロフェン | 効き始めが早く鎮痛力が高い | しっかり効かせたい人 | 胃への負担あり。食後に服用 |
| イブA錠 | イブプロフェン | 生理痛にも効果的 | 女性の月経関連頭痛 | 胃腸が弱い人は注意 |
| バファリンA | アスピリン | 古くからある定番成分 | 即効性を求める人 | 小児や妊娠中の使用は医師に相談 |
| タイレノールA | アセトアミノフェン | 胃への負担が少ない | 胃の弱い人、高齢者 | 鎮痛力はやや穏やか |
| セデス・ハイ | アセトアミノフェン+カフェイン+鎮静成分 | 複合的に痛みを抑える | なかなか治まらない頭痛 | 月10日以上の使用は薬物乱用頭痛のリスク |
市販薬を選ぶ際のポイントは、まず自分の頭痛のタイプを把握することです。片頭痛の場合は即効性のあるロキソニンSやイブA錠が適しています。胃が弱い方や妊娠中の方(医師の指示のもと)は、アセトアミノフェン系のタイレノールAが選択肢になります。
一方、カフェインや鎮静成分を含む複合鎮痛薬は、効き目は良いものの依存性が加わりやすく、薬物乱用頭痛(MOH)のリスクが単剤より高いことがわかっています。頭痛が月に4回以上ある方は、複合鎮痛薬よりも単剤を選ぶのが安全です。
漢方薬も選択肢のひとつです。冷えやすい体質で吐き気を伴う片頭痛には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、むくみやすい方の頭痛には五苓散(ごれいさん)が使われることがあります。即効性は低いですが、体質改善を目指す方には検討の価値があります。
市販薬で改善しない場合の専門治療
市販薬を月に10日以上使っている、または効き目が弱くなってきたと感じる場合は、頭痛外来や脳神経内科の受診を検討しましょう。日本には頭痛専門医が在籍するクリニックが各地にあり、適切な診断と治療を受けることができます。
受診の目安
- 頭痛で仕事や家事に支障が出ている
- 市販薬の使用頻度が増えている
- 頭痛のパターンが変わってきた
- 「もしかして脳の病気では」と不安がある
頭痛外来では、問診と必要に応じてMRIなどの画像検査が行われます。初診の費用は保険診療の3割負担で、一般的には数万円の範囲内に収まることが多いですが、検査内容によって異なります。正確な金額は受診する医療機関に直接確認してください。
最新の片頭痛治療
片頭痛の治療は大きく分けて、発作が起きたときに服用する「急性期治療」と、発作の頻度を減らす「予防療法」があります。
急性期治療の第一選択はトリプタン系薬剤です。片頭痛の発作が起きた初期に服用することで、CGRPの放出を抑えて痛みを鎮めます。2025年12月には、急性期治療と予防の両方に使える日本初の経口薬「ナルティークOD錠75mg(一般名:リメゲパント)」が発売されました。
予防療法には、CGRP抗体薬のエムガルティやアジョビなどの注射薬もあります。これらは月に1回の注射で片頭痛の発作頻度を大幅に減らす効果が期待でき、頭痛で予定を崩すことが多い方に適しています。予防薬の費用は医療機関によって異なりますが、保険適用となる場合があります。
日常生活でできる頭痛対策
頭痛ダイアリーをつける
いつ、どのくらいの強さで頭痛が起きたのか、その前日に何を食べたのか、睡眠時間はどれくらいだったのかを記録します。自分の頭痛の誘因が見えてくると、予防の対策が立てやすくなります。最近はスマートフォンのアプリで簡単に記録できるものもあります。
気圧変化への備え
天気痛に悩む方は、気圧の変化を事前に知ることで対策できます。気圧予報アプリを活用し、気圧が下がりそうな日は以下の対策を試してみてください。
- 耳まわりや首を温めて血行を良くする
- 前日から十分な睡眠をとる
- カフェインの摂りすぎに注意する
- 軽いストレッチで筋肉の緊張をほぐす
姿勢とストレッチ
デスクワーク中の方は、画面の高さを目線の位置に合わせ、背筋を伸ばすことを意識しましょう。1時間に一度は席を立ち、肩を回したり首をゆっくり倒したりするストレッチを取り入れてください。首や肩のこりは緊張型頭痛の大きな誘因です。
入浴と睡眠
38〜40度のぬるめのお湯にゆっくり浸かると、全身の血行が良くなり筋肉の緊張がほぐれます。寝る前のスマートフォンの使用は控え、規則正しい睡眠リズムを保つことも頭痛予防に効果的です。
地域の医療資源を活用する
頭痛でお悩みの方は、お近くの頭痛外来や脳神経内科を探してみてください。日本頭痛学会のホームページでは、頭痛専門医が在籍する医療機関の情報を検索できます。また、多くのクリニックではオンライン診療にも対応しており、通院が難しい方でも自宅から相談できます。
かかりつけ医に「頭痛が頻繁にある」と相談するだけでも、適切な専門医療機関を紹介してもらえることがあります。ひとりで我慢せず、まずは誰かに相談することが頭痛改善の第一歩です。
頭痛は我慢して乗り越えるものではありません。適切な対処法を知り、必要なときには専門医の力を借りることで、頭痛と上手につきあっていくことができます。この記事が、あなたの頭痛対策のきっかけになれば幸いです。