日本人の頭痛、その実態とは
日本人の頭痛のほとんどは「片頭痛」と「緊張型頭痛」の2種類に分けられます。日本頭痛学会の診療ガイドラインによると、15歳以上の男女の8.4%が片頭痛と推計され、特に30代女性では5人に1人、40代女性でも5.5人に1人が片頭痛を抱えているといわれます。
片頭痛は頭の片側か両側がズキズキと脈打ち、動くと痛みが強くなるのが特徴です。吐き気や嘔吐を伴ったり、光や音、匂いに敏感になったりすることも。一方、緊張型頭痛は後頭部やこめかみをベルトで締め付けられるような鈍い痛みで、デスクワークやスマホの長時間使用による筋肉の緊張が主な原因です。
近年、パソコンやスマートフォンの普及によって緊張型頭痛が急増しています。頭重感も含めると、慢性頭痛の約85%を緊張型が占めるという報告もあります。
頭痛を放置するリスク
頭痛を我慢し続けることの危険性は、実は深刻です。
第一に、**薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)**があります。市販の痛み止めを頻繁に飲み続けると、かえって頭痛が慢性化して治りにくくなるケースが少なくありません。
第二に、重大な疾患を見逃すリスクです。くも膜下出血や脳腫瘍などが原因で起きる「二次性頭痛」は、命に関わることもあります。「いつもと違う頭痛」を感じたら、ためらわずに医療機関を受診してください。
第三に、経済的・心理的な損失です。片頭痛による従業員の休業やパフォーマンス低下による経済損失は、国内全体で年間3,600億円から2兆3,000億円にも上ると推計されています。痛みそのものだけでなく、「次はいつ来るか」という不安から、約束を避けたり仕事の生産性が落ちたりする心理的ストレスも無視できません。
自分の頭痛タイプを知るチェックポイント
| 項目 | 片頭痛 | 緊張型頭痛 |
|---|
| 痛みの性質 | ズキズキと脈打つ | 締め付けられるような鈍痛 |
| 痛む場所 | 片側または両側のこめかみ周辺 | 後頭部・首すじ・こめかみ全体 |
| 持続時間 | 4〜72時間 | 数十分〜数日続くことも |
| 随伴症状 | 吐き気・光や音に過敏 | 肩こり・目の疲れ |
| 悪化要因 | 動くと痛みが増す | 長時間のデスクワーク・猫背 |
| 適した対処 | 静かな暗い部屋で休む・冷やす | ストレッチ・温めて血流改善 |
頭痛の最新治療と選択肢
1. 急性期治療(発作が起きたとき)
従来のトリプタン製剤に加えて、近年注目されているのが**CGRP受容体拮抗薬(ジタン系)**です。2025年12月に国内初の経口CGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠(一般名:リメゲパント)」が発売されました。血管を収縮させる作用がないため、心臓や血管への負担が少なく、トリプタン製剤が使いにくい方にも選択肢が広がっています。
2. 予防療法(頭痛を起こりにくくする)
頭痛の頻度が高い方には、CGRP関連の予防薬や抗CGRPモノクローナル抗体の注射などが用いられます。月に数回の注射で発作そのものを減らすことができるため、「頭痛のない生活」を目指す方に選ばれています。
3. セルフケア
- 片頭痛のとき:暗い静かな部屋で休み、タオルで包んだ保冷剤を頭に当てる
- 緊張型頭痛のとき:首・肩のストレッチと温めで血流を促進
- 共通の予防策:規則正しい睡眠、適度な水分補給、画面との距離を保つ
頭痛外来を受診するタイミング
次のような症状がある方は、早めに「頭痛外来」や「脳神経内科」を受診しましょう。
- 週に2回以上頭痛薬を飲んでいる
- 痛みが徐々に強くなっている、または突然の激しい痛み
- 50歳を過ぎてから初めて頭痛が出た
- しびれや言葉の障害、発熱を伴う
受診の際は、頭痛ダイアリー(いつ・どのくらい・どんな痛みか)をつけておくと診断がスムーズになります。日本頭痛学会のウェブサイトでは、患者向けガイドや全国の頭痛専門医の情報を確認できます。地域のクリニック探しには、お住まいの自治体の医療機関検索や「頭痛外来 [地域名]」での検索が便利です。
働く世代のための頭痛対策
デスクワーク中心の方には、1時間に1回立ち上がる、ディスプレイの高さを目の位置に合わせる、肩をすくめて5秒キープしてストンと力を抜く「肩すくめリリース」を習慣にするのがおすすめです。在宅勤務が増えた今、自宅の椅子や照明の環境も見直してみましょう。
頭痛は「我慢するもの」ではなく、「治療できるもの」です。適切な診断と治療を受けることで、発作が起こらなくなる人も実際にいます。まずは自分の頭痛のタイプを知ることから始めてみてください。気になる症状があれば、専門医に相談することをおすすめします。