自賠責保険だけでは足りない理由
日本の車の保険は二階建てだ。法律で加入が義務づけられている自賠責保険と、自分の判断で入る任意保険。自賠責保険が補償するのは相手のケガや死亡だけで、1人あたりの上限は傷害120万円、後遺障害4,000万円、死亡3,000万円と決まっている。相手の車をへこませた修理代や、同乗した家族の治療費は、この範囲に入らない。
自賠責保険に入っていない車を運転すれば、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、免許停止処分に違反点数6点が科される。車検も通らない。任意保険には罰則がないが、対人賠償の普及率は9割前後とされ、実際にはほとんどのドライバーが契約している。
任意保険の柱は四つある。相手のケガを補償する対人賠償、相手の物を壊したときの対物賠償、自分と同乗者のケガを過失割合に関係なく補償する人身傷害、そして自分の車の修理費をカバーする車両保険だ。対人と対物は無制限を選ぶのが今の標準で、ここを削る人は少ない。
特約は足すより重複を消す
弁護士特約、他車運転特約、無過失特約、対物超過特約。名前が並ぶと身構えるが、すべてを付ける必要はない。むしろ見直しで効くのは、すでに持っている備えとの重なりを外す作業だ。JAFのロードサービスに入っていればロードサービス特約は重なりやすい。家族のケガの備えが厚ければ、治療費の実費部分は重複する。
ただし人身傷害保険の役割は治療費だけではない。休業損害や慰謝料まで含めて補償するのはこの保険で、金額を削るときは補償の範囲を確認しておきたい。示談交渉サービスが付いているかどうかも、いざというときの負担を大きく左右する。
保険料は何で決まるのか
保険料を動かす最大の要素が等級だ。1〜20等級まであり、初めて契約する車は原則6等級。1年無事故で1つ上がり、20等級が上限になる。事故で保険金を請求すれば翌年に下がる。同じ等級でも事故歴のある契約は割増になり、その期間を事故有係数適用期間と呼ぶ。
ほかにも免許証の色、運転者年齢条件、運転者限定、使用目的、前年走行距離、車種、地域が効いてくる。グリーン免許は割高、ゴールド免許は割安というのが一般的だ。通勤・通学使用は日常・レジャー使用より走行距離が長くなるため高くなりやすい。
保険比較サービスの調査では、年齢層別の年間保険料の平均が公表されている。21歳未満で9万円台後半、21〜25歳で8万円前後、30〜34歳で5万円台前半、40〜50代は4万円台半ば、70歳以上で4万円台後半という分布だ。若いほど高く、40代以降は20等級に達する人が増えて下げ幅が小さくなる。都市部は事故件数が多く、地方は1台あたりの走行距離が長い。どちらも保険料を押し上げる方向に働く。
補償の組み方で年間費用はここまで変わる
同じ車でも、何を補償するかで年間保険料は別物になる。下表は年齢層別の平均と一般的な特約構成をもとにした目安で、実際の金額は車種・地域・等級で上下する。
| 契約の型 | 年間保険料の目安 | 向いている人 | 強み | 注意点 |
|---|
| 対人・対物無制限+人身傷害3,000万円 | 4万5,000円〜6万円台 | 通勤や送迎で毎日乗る人 | 相手への備えが厚く、交渉も任せられる | 車両保険なしでは自分の車の修理費は全額自己負担 |
| 上記+車両保険(免責5〜10万円) | 6万円〜9万円前後 | 新車、ローン残債のある人 | 修理費や買い替え費用までカバー | 時価額を超える修理は全損扱いになりやすい |
| 運転者本人限定+年齢条件設定 | 4万円台〜5万円台 | 夫婦で1台、単身者 | 割安で等級も維持しやすい | 限定した人以外が運転すると補償外 |
| 初契約(6等級)・20代 | 6万円〜10万円前後 | 初めて車を持つ人 | 家族の等級を引き継ぐと下げられる場合がある | 年齢条件をかけにくく高止まりしやすい |
契約経路でも差が出る。保険代理店を通す型は担当者に相談できる代わりに、代理店手数料を含む分だけ割高になりやすい。ネット完結のダイレクト型自動車保険はその中間コストがないぶん割安な傾向で、インターネット割引や証券ペーパーレス割引を合わせると年間で数千円から1万数千円の差になることもある。事故対応はコールセンター中心になる点は、性格に合うかどうかで選びたい。
見直しの進め方と相談先
更新の案内が届いてから慌てるより、保険証券を1枚出して次の順に確認するほうが早い。
- 等級と事故歴を確認する。等級は保険会社をまたいで引き継げるので、数字が正しく反映されているかを見る。
- 補償の重複を洗い出す。ロードサービス、医療系の備え、家族の契約との重なりを一つずつ消していく。
- 運転者限定と年齢条件を実態に合わせる。親族がたまに運転するなら家族限定、夫婦だけなら夫婦限定や本人限定が基本になる。
- 同じ条件で3〜5社の見積もりを並べる。補償を揃えないと比較にならないので、対人対物の限度額、人身傷害の金額、車両保険の有無と免責は固定してから動かす。
地域ごとの相談先も押さえておきたい。地方で車が生活の足になっている地域では、JA共済の窓口や地域の保険代理店が対面の相談役になりやすい。ディーラーで契約すれば点検と一緒に更新の話が進む。金額や示談で行き詰まったときは、そんぽADRセンターのような中立の相談窓口を使う手もある。
実際の見直し例をいくつか挙げる。さいたま市の30代会社員は、初めての車を6等級で契約する際、本人限定とゴールド免許割引、ネット割引を重ねて初年度の負担を1万円前後抑えた。群馬県の40代は子どもが免許を取ったタイミングで家族限定に加えたところ保険料が跳ね上がり、子ども名義で契約して等級を引き継ぐ形と比べてから決めた。静岡県の60代夫婦は、車両保険を外すのではなく免責金額を10万円に上げて、補償を残したまま費用を調整している。
保険料は上がり続けている。だからこそ、毎年同じ内容で更新するのではなく、等級の数字と補償の中身を一度並べて眺める。それだけで、払いすぎている部分と足りていない部分の両方が見えてくる。