日本人に多い頭痛のタイプと見分け方
頭痛とひと口に言っても、その正体は大きく異なります。日本頭痛学会の診療ガイドラインでは、一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛)と二次性頭痛(くも膜下出血などの危険な頭痛)に大別されます。
片頭痛は、頭の片側がズキズキと脈打つように痛み、吐き気や光・音・においへの過敏を伴うのが特徴です。痛みは4〜72時間続き、日本の有病率は女性で12.9%、男性で3.6%と、特に20〜40代の女性に多く見られます。
緊張型頭痛は、頭全体がギューッと締め付けられるような痛みで、肩こりや目の疲れが引き金になることが多いタイプです。デスクワーク中心の生活やスマートフォンの長時間使用が習慣になっている方に多く見られます。
見分けるポイントは「痛みの質」です。脈打つような痛みで吐き気を伴うなら片頭痛、締め付けられるような鈍い痛みなら緊張型頭痛の可能性が高いと言えます。ただし、突然の激痛や「人生で経験したことがないほどの痛み」を感じた場合は、迷わず救急受診してください。くも膜下出血などの危険な二次性頭痛を見逃さないことが最優先です。
市販薬の選び方:ロキソニン・イブ・バファリンを使い分ける
薬局で「どれを選べばいいのか分からない」と悩む方は少なくありません。日本の市販鎮痛薬の代表格である3製品には、それぞれ特徴があります。
| 製品名 | 主成分 | 特徴 | 向いている症状 | 注意点 |
|---|
| ロキソニンS | ロキソプロフェン60mg | 効果が強く速い。処方薬と同じ成分 | 発熱を伴う頭痛、しっかり効かせたい時 | 15歳未満は使用不可。空腹時は避ける |
| イブ(EVE) | イブプロフェン | 頭痛のCMでおなじみの定番 | 生理痛を伴う頭痛など幅広い痛み | 常用すると効果が弱まりやすい |
| バファリンA | アスピリン+胃保護成分 | 胃にやさしい設計 | 胃が弱い方の頭痛・発熱 | 炎症の強い痛みには効果が弱め |
市販薬を使う際のポイントは3つ。まず空腹時を避けること。次に水かぬるま湯で服用すること。そして「痛くなる前に飲む」習慣を慎重に見直すことです。特に注意したいのが**薬剤の使用過多による頭痛(MOH)**です。日本頭痛学会のガイドラインでは、単純鎮痛薬を月15日以上、トリプタンを月10日以上服用し続けると、逆に頭痛が慢性化するとされています。「痛みが怖いから早めに飲む」という習慣が、実は頭痛を悪化させている可能性があるのです。
専門医による治療:頭痛外来と新時代の薬
市販薬で改善しない頭痛は、ひとりで抱え込まずに専門医へ相談しましょう。日本頭痛学会が認定する頭痛専門医は、学会のホームページから全国の医師を検索できます。頭痛外来では、くも膜下出血などの危険な頭痛を見極めた上で、片頭痛の診断と治療を専門的に行います。
急性期治療の選択肢
従来のトリプタン製剤に加え、2025年12月に日本で初めてとなる経口CGRP受容体拮抗薬「ナルティークOD錠75mg」(一般名:リメゲパント硫酸塩水和物)が発売されました。この薬は、片頭痛の急性期治療と発症抑制の両方に使用できるのが特徴です。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は片頭痛発作中に血中で増加する物質で、これを抑えることで痛みのシグナル伝達をブロックします。トリプタンが使えない方や効果が不十分だった方にも新たな選択肢となることが期待されています。
予防療法の選択肢
月に2回以上の発作がある方、または日常生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある方は、予防療法の検討対象です。
**CGRP関連抗体薬(注射薬)**は2021年に日本で承認された最も新しいクラスの予防薬です。月1回の皮下注射で発作頻度を大幅に減らす効果があります。費用は3割負担の場合、月1回あたり約1万2,000〜1万3,000円程度です。
| 製品名 | 一般名 | 投与間隔 | 費用目安(3割負担) |
|---|
| エムガルティ | ガルカネズマブ | 月1回(初回2本) | 約1万3,000円/本 |
| アジョビ | フレマネズマブ | 月1回または3ヶ月1回 | 約1万2,000円/本 |
| アイモビーグ | エレヌマブ | 月1回 | 約1万2,000円/本 |
内服の予防薬としては、ロメリジン(カルシウム拮抗薬)、バルプロ酸、アミトリプチリンなどが使われますが、効果が出るまで2〜3ヶ月かかることがあります。
受診先としては「頭痛外来」「脳神経内科」「脳神経外科」を選びましょう。かかりつけ医に相談して紹介してもらうことも可能です。初診の診察料は3割負担で約2,000〜3,000円、MRI・CT検査を行う場合は約5,000〜1万円が目安です。
気圧と頭痛:天気痛対策の実践
日本では「台風が近づくと頭痛がする」と訴える方が多く、こうした気象条件の変化による体調不良は気象病と呼ばれています。低気圧や台風の接近に伴う気圧の急激な低下が、頭痛やめまい、眠気、倦怠感を引き起こすと考えられています。
気象病への対策として、以下の方法が有効です。
気圧の変化を予測する:気圧の変化が分かるアプリや天気予報を活用し、低気圧が接近する前に備えましょう。頭痛が起こりやすいタイミングが分かれば、予定の調整や早めの休息が可能になります。
耳まわりの血行を良くする:耳には内耳という平衡感覚を司る器官があり、気圧の変化を感じ取っています。耳まわりを温めたり、軽くマッサージしたりすることで、気圧変動への過敏さを和らげる効果が期待できます。
規則正しい生活リズムを維持する:睡眠不足や過労は気象病の症状を悪化させます。特に片頭痛を持つ方は、休日の寝だめがかえって頭痛の引き金になることがあるため、平日と休日の起床時間の差をできるだけ小さくすることが推奨されます。
頭痛ダイアリーで自分のパターンを知る
頭痛の原因を特定するための最も有効なツールが頭痛ダイアリーです。日々の頭痛の発生日時、痛みの程度、持続時間、随伴症状、その日の睡眠・食事・気圧・ストレスなどを記録します。日本頭痛学会のガイドラインでも、診療を効率よく行うためにダイアリーの活用が推奨されています(グレードA)。
頭痛ダイアリーを2〜3ヶ月続けると、自分の頭痛を引き起こす誘因(寝不足、月経周期、気圧変化、特定の食べ物、ストレスなど)のパターンが見えてきます。この記録を医師に見せることで、診断の精度が上がり、より適切な治療を選択できるようになります。
例えば、東京都内で働く30代の会社員Aさんは、月に数回の片頭痛に悩まされていました。頭痛ダイアリーを3ヶ月続けたところ、生理前と週末の寝だめ後に発作が集中していることが判明。休日の起床時間を平日と同じにし、気圧が下がる日の前日から耳まわりを温める習慣を取り入れることで、発作の頻度が半分以下に減ったそうです。
行動につなげるための3つのステップ
ステップ1:自己判断せず、まず記録する
市販薬を飲む前に、痛みの場所・質・持続時間・随伴症状をメモしておきましょう。この記録は受診時の診断に大きく役立ちます。
ステップ2:市販薬の使用頻度を確認する
単純鎮痛薬を月15日以上使っている方は、薬剤の使用過多による頭痛(MOH)のリスクがあります。まずは市販薬の使用頻度を減らし、専門医に相談してください。
ステップ3:頭痛外来・脳神経内科を受診する
日本頭痛学会のホームページで頭痛専門医を検索し、予約を取りましょう。かかりつけ医がいる場合は紹介状を書いてもらうとスムーズです。初診では問診と頭痛ダイアリーをもとに診断が行われ、必要に応じてMRI・CT検査が実施されます。
頭痛は我慢するものではありません。適切な診断と治療によって、多くの方が痛みから解放されています。2025年以降、日本でもCGRP関連の新しい治療薬が続々と登場し、治療の選択肢は確実に広がっています。あなたの頭痛が少しでも軽くなるよう、まずは一歩踏み出してみてください。
なお、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療方針については必ず医師に相談してください。