頭痛のタイプを知ることが治療の第一歩
頭痛と一口にいっても、実はタイプによって治療法がまったく異なります。間違った対処を続けると、症状を悪化させることさえあるのです。
片頭痛——「ズキズキ」と脈打つ痛み
片頭痛は、こめかみあたりが脈打つようにズキズキと痛むのが特徴です。吐き気を伴ったり、光や音がまぶしく感じたりすることも多く、発作中は仕事や家事どころではなくなります。日本における片頭痛の年間有病率は8.4%で、特に20代から40代の女性に多く、30代女性では実に5人に1人が片頭痛を経験しているというデータもあります。
緊張型頭痛——「ギューッ」と締め付けられる痛み
頭全体がベルトで締め付けられるような重い痛みが続くのが緊張型頭痛です。首や肩のこり、眼精疲労、ストレスが主な誘因とされ、デスクワーク中心の生活を送る人に多く見られます。40代以降の女性に多いのも特徴です。
危険な頭痛のサイン
突然の激しい痛み、これまでに経験したことのない痛み、発熱や意識障害を伴う頭痛、進行性に悪化する頭痛は、くも膜下出血や脳腫瘍などの重大な疾患が隠れている可能性があります。このような場合は迷わず救急外来を受診してください。
医療機関の選び方——頭痛外来と専門医の探し方
「病院に行きたいけど、何科に行けばいいのか分からない」という声をよく聞きます。頭痛の診断・治療を専門に行うのは脳神経内科と脳神経外科です。最近では「頭痛外来」を標榜するクリニックも全国に増えています。
日本頭痛学会のホームページでは、学会が認定する専門医や教育施設のリストを公開しています。地域の頭痛外来を探す際は、このリストを参考にすると確実です。また、かかりつけ医がいる場合は、頭痛外来のある医療機関を紹介してもらうのも一つの方法です。
受診前に準備しておくこと
頭痛外来を受診する際は、以下の情報を整理しておくと診断がスムーズに進みます。
- 頭痛の頻度——月に何回、頭痛が起こるか
- 痛みの性質——ズキズキか、締め付けられるような痛みか
- 痛む場所——こめかみ、後頭部、頭全体など
- 頭痛のきっかけ——睡眠不足、ストレス、天気の変化、生理前後など
- 服用している薬——市販薬を含めて、何をどれくらいの頻度で飲んでいるか
最近では、頭痛の記録をスマートフォンのアプリでつけられる「頭痛ダイアリー」も普及しています。痛みの強さや時間帯、天気や気圧との関連を記録しておくと、診察の際に非常に役立ちます。
治療薬の選び方——3世代の片頭痛治療薬を理解する
片頭痛の治療薬は、この10年で大きく進歩しました。現在の治療は大きく「急性期治療」(痛みが出たときに飲む薬)と「予防療法」(発作そのものを抑える薬)の2本柱で考えます。
急性期治療薬の比較
| 世代 | 代表的な薬 | 特徴 | 適している人 | 注意点 |
|---|
| 第1世代 | トリプタン系(イミグラン、ゾーミッグなど) | 発作時に最も効果が高い定番薬 | 片頭痛と診断された人 | 心血管疾患の既往がある人は使用不可 |
| 第2世代 | ジタン系(レイボー) | 血管を収縮させないため心血管リスクが低い | トリプタンが使えない人、高齢者 | 眠気が出ることがある |
| 第2世代 | ゲパント系(ナルティーク) | 急性期治療と予防の両方に使える日本初の経口薬 | 発作が頻繁な人、薬を減らしたい人 | 専門医の処方が必要 |
2025年12月に発売されたゲパント系の薬「ナルティーク(一般名:リメゲパント)」は、これまで別々に処方されていた急性期治療と予防治療を1つの薬でまかなえる画期的な選択肢として注目されています。
予防療法の重要性
片頭痛の発作が月に2回以上ある、または頭痛のために日常生活に支障をきたす日が月に3日以上ある場合は、予防療法の導入が検討されます。予防薬には、抗てんかん薬、抗うつ薬、β遮断薬、CGRP関連薬剤などがあり、いずれも頭痛専門医の判断のもとで処方されます。
薬の飲みすぎには要注意
市販の鎮痛薬を月に10日以上、または週に2〜3日以上飲み続けていると、「薬物の使用過多による頭痛(MOH)」という状態に陥ることがあります。これは、痛み止めを飲めば飲むほど頭痛が悪化するという悪循環を引き起こします。「市販薬が効かなくなってきた」「飲む量が増えてきた」と感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。
日常生活でできる頭痛対策
薬による治療と並行して、生活習慣の見直しも頭痛の予防に効果的です。
天気痛・気圧の変化への対策
日本では「天気が悪くなると頭痛がする」という天気痛に悩む人が多く、気圧の急激な変化が片頭痛や緊張型頭痛を引き起こすことが知られています。気圧の変化が大きい日は、以下の対策を試してみてください。
- 耳まわりの血行を良くする——耳を引っ張ったり、マッサージしたりする
- こまめな水分補給——気圧の変化で体内の水分バランスが崩れやすい
- 頭痛が起きそうな日のスケジュールを調整——無理をしない
首・肩のこりへのアプローチ
緊張型頭痛の多くは首や肩の筋肉の緊張が原因です。デスクワークの合間にストレッチを取り入れたり、就寝前に温めて血流を促したりするだけでも、頭痛の頻度が変わることがあります。
漢方薬という選択肢
西洋薬が合わない場合や、体質に合わせたアプローチを希望する場合は、漢方薬も選択肢の一つです。葛根湯、釣藤散、五苓散、呉茱萸湯など、頭痛のタイプや体質に応じて使い分けられます。漢方薬は市販品もありますが、自分の症状に合った処方を受けるには、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのがおすすめです。
地域で探す頭痛外来——専門医へのアクセス
頭痛の治療を専門とするクリニックは、東京や大阪などの都市部を中心に増えていますが、地域によっては脳神経内科の医師が限られている場合もあります。日本頭痛学会の認定専門医リストや、各都道府県の医師会のホームページで「頭痛外来」を検索する方法が確実です。
近年はオンライン診療を取り入れるクリニックも増えており、通院が難しい方や地方在住の方でも、専門医の診察を受けられる環境が整いつつあります。
頭痛と上手につきあうために
頭痛は、適切な診断と治療を受ければ、多くの場合コントロール可能です。「ちょっとした頭痛だから」と我慢を続けると、薬の使いすぎによる頭痛や、仕事や家事のパフォーマンス低下といった二次的な問題を引き起こすこともあります。
まずは自分の頭痛のタイプを知ることから始めましょう。頭痛ダイアリーをつけながら1〜2週間過ごし、その記録を持って頭痛外来を受診する。たったこれだけのことで、治療の選択肢はぐっと広がります。
「頭痛くらいで病院に行くのは大げさかな」と考える方も多いかもしれません。しかし、頭痛は立派な病気です。日本頭痛学会の専門医がいる医療機関は全国にあり、適切な治療を受けることで、頭痛に振り回されない毎日を取り戻せます。一人で我慢せず、まずは一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。