保険料を押し上げる三つの事情
まず押さえておきたいのは、自賠責保険だけでは備えとして足りないという点だ。自賠責は相手のケガや死亡に対する最低限の補償で、傷害は被害者1名あたり最大120万円、死亡でも3,000万円が上限となる。後遺障害は等級に応じて75万円から4,000万円までだが、治療が長引けばこの枠はすぐに埋まる。だからこそ任意保険の対人賠償を無制限にするのが実質的な標準になっている。業界団体が公表している資料によれば、対人賠償の加入率は全国平均で7割台半ば。大阪府は8割を超え、沖縄県は5割台半ばにとどまり、地域による開きは27ポイント前後に及ぶ。
次に、自賠責保険料そのものが動く。11月1日以降に始まる契約から平均6.2%の引き上げが適用され、自家用乗用自動車の24か月契約は17,650円から18,560円へ、軽自動車(検査対象車)は17,540円から18,660円へ変わる。13年ぶりの改定だけに、家計への響き方は小さくない。強制保険は全国ほぼ一律の料率なので、ここで差を付けられる余地はない。調整するなら任意保険の側ということになる。
三つ目が等級の仕組みだ。任意保険には1等級から20等級までの段階があり、初めて契約する人は原則6等級から始まる。1年間事故を起こさず保険を使わなければ翌年に1等級上がり、逆に保険金が支払われる事故を起こすと翌年は3等級下がる(1等級ダウンで済む事故もある)。20等級に届くまで最短でも14年かかる計算だ。ただし、家族がすでに契約していればセカンドカー割引で7等級から始められる場合があり、記名被保険者を同居家族に変更すれば等級を引き継げる。軽微な傷を保険で直すか自費で直すかは、翌年以降の保険料を左右する分岐点になる。
年代による差も無視できない。ある損害保険会社が公表している試算例では、22歳で車両保険ありの場合の月額は21,105円、車両保険なしなら9,117円。これが30代になると7,316円と3,212円、50代では5,529円と2,416円まで下がる。若い世代の保険料が高いのは年齢条件を緩く設定せざるを得ないためで、ここを実態に合わせて絞り込むだけで数千円単位の差が出る。
補償の組み合わせと費用の目安
| 補償の種類 | 保険料の目安 | 向いている人 | メリット | 注意点 |
|---|
| 自賠責保険(強制) | 24か月 17,650円(11月1日以降始期は18,560円) | すべての所有者 | 加入が義務。相手の人的損害を最低限カバー | 自分のケガ、相手の車や物、自車の修理は対象外 |
| 任意保険・対人対物のみ | 月2,400〜9,100円程度(年代別試算) | 車の時価が低く、修理は自費で賄える人 | 相手への賠償リスクを無制限で備えられる | 自車の損害は全額自己負担 |
| 車両保険あり | 月5,500〜21,000円程度(年代別試算) | 新車、ローン残債がある車、修理費を抑えたい人 | 事故や盗難、自然災害の修理費をカバー | 免責金額と時価額の設定で保険料が変わる |
| 人身傷害+弁護士特約 | 年1,200〜3,000円程度(特約部分) | 通勤や家族の送迎でよく運転する人 | 自分のケガを過失割合に関係なく補償。示談交渉も任せられる | 特約の有無は会社ごとに差がある |
費用感は補償の厚みで大きく変わる。表の金額はあくまで一例で、同じ条件でも車種による型式別料率クラスや免責金額の設定で上下する。相場を知るには、条件をそろえたうえで複数社の見積もりを並べるのが早い。ネット保険は入力の手間が少なく、代理店型は対面での相談ができる。どちらが優れているという話ではなく、自分の性格と事故への不安の大きさで選べばいい。
保険料を抑える手段はほかにもある。運転者限定を「本人限定」や「夫婦限定」にすると、範囲を絞らない場合より安くなる。ただし友人や別居の親族が運転する可能性があるなら、その分は補償されなくなるので設定は慎重に。ゴールド免許割引、新車割引、インターネット割引といった項目も積み重なると効いてくる。
埼玉県で軽自動車を通勤に使う会社員の佐藤さん(34歳)は、前の契約で家族限定のまま車両保険を一般型にしていた。見直しの際に、通勤は本人だけだと確認して運転者を本人限定に変更、車両保険は免責金額を10万円に上げてエコノミー型へ。セカンドカー割引で7等級から始まり、ゴールド免許割引も重なって、月額は契約前より数千円下がったという。「等級の欄を初めてまじまじと見た」と本人は話す。保険料の話は数字が多くて後回しにしがちだが、証券1枚で見える部分は意外と大きい。
見直しを進める順番
- 現在の証券で等級と事故有係数を確認する。等級は「ノンフリート等級」の欄に記載されている。
- 運転者限定と年齢条件を実際の使い方に合わせる。普段運転しない家族を入れたままにしていないか。
- 車両保険は時価額と免責金額のバランスで調整する。時価が下がった車に厚い補償を付けても効果は限定的だ。
- 条件を固定したまま複数社を比較する。対人対物無制限、人身傷害の金額、弁護士特約の有無をそろえないと差が読めない。
- 更新時期を車検に合わせる。自賠責は24か月・36か月の契約があり、車検時期とずれると更新の手間が増える。
地域ごとの事情も頭に入れておきたい。沖縄県や離島は自賠責の基準料率が本島と異なる区分になっており、都市部は月極駐車場の確保が前提となる。北海道や東北では冬季の路面状況から車両保険の必要性が上がりやすい。同じ等級でも住む場所で事故に遭う確率は変わるので、地元の代理店や保険会社の担当者に道路事情を聞いてみる価値はある。
11月の改定を機に、証券を机に出して等級と補償の欄を一度眺めてほしい。見直しは更新月に慌ててやるより、余裕のあるうちに条件を書き出しておくほうがうまくいく。