日本人に多い頭痛のタイプとその特徴
頭痛と一口に言っても、その正体は人それぞれです。日本で最も多いのは、肩や首のこりが原因で起こる緊張型頭痛です。長時間のデスクワークやスマートフォンの操作で僧帽筋や首の筋肉が固まると、後頭部から頭全体にかけてギューッと締め付けられるような痛みが現れます。雨の日の湿気やエアコンの冷えも、筋肉の緊張を強めるきっかけになります。
もう一つ代表的なのが片頭痛です。こめかみや目の奥が脈打つように痛み、吐き気や光・音への過敏を伴うのが特徴です。日本の片頭痛患者は特に女性に多く、月経周期に合わせて悪化する「月経関連片頭痛」に悩む方も少なくありません。エストロゲンの急激な低下が引き金になるため、生理の2〜3日前から痛みが始まるケースが典型的です。
さらに見落とされがちなのが、薬の使い過ぎによる頭痛(薬物乱用頭痛)です。「痛くなったらすぐ鎮痛薬」という習慣が続くと、むしろ頭痛が慢性化してしまいます。単純な鎮痛薬を月に15日以上、トリプタン製剤を月に10日以上使っている場合は、専門医への相談が望ましいとされています。
頭痛タイプ別のセルフケアと生活習慣の見直し
緊張型頭痛には首・肩のケア
緊張型頭痛の多くは、筋肉の緊張をほぐすことで軽くなります。デスクワークの合間に首をゆっくり回したり、肩甲骨を寄せるストレッチを取り入れたりするだけでも違います。入浴で温めて血行を促すのも効果的です。鍼灸や整体といった東洋医学の施術を選ぶ方も増えており、国家資格を持つ施術院なら保険適用外でも安心して受けられます。
ツボ押しも手軽な方法です。後頭部のくぼみにある風池、こめかみの太陽、手の甲の合谷あたりを、痛気持ちいい程度の強さでゆっくり押してみてください。ただし、強く押しすぎると逆に痛みが強くなることがあるので注意が必要です。
片頭痛には発作を減らす生活習慣
片頭痛は、睡眠不足だけでなく寝過ぎでも誘発されます。休日の寝だめは逆効果になることがあるため、平日も休日も同じ時間に起きることを心がけましょう。気圧の変化に敏感な方は、天気予報の「頭痛予報」をチェックして、荒天の日は無理をしないことも大切です。
チョコレート、チーズ、赤ワイン、中華料理の味の素などは片頭痛の誘因になりやすい食品として知られています。自分がどの食べ物で痛みが出やすいか、頭痛ダイアリーをつけてパターンを把握するのがおすすめです。マグネシウムやビタミンB2を意識して摂ることも、予防に役立つとされています。
月経関連片頭痛には周期に合わせた対策
生理周期と頭痛の関係が見えてきたら、痛くなる2日前からの予防治療を検討できます。婦人科と頭痛外来のどちらを受診すべきか迷う場合は、生理痛やPMSが強いなら婦人科、とにかく頭痛がひどい場合は脳神経内科や脳神経外科の頭痛外来が適しています。
進化する日本の頭痛治療と受診の目安
日本の頭痛治療は近年大きく変わりました。2021年以降、片頭痛の予防を目的としたCGRP関連抗体薬が次々と保険適用になり、従来は難しかった発作の回数そのものを減らす治療が可能になっています。さらに2025年には、発作時と予防の両方に使える経口薬も登場し、選択肢が広がりました。
主な治療法を比較すると、以下のようになります。
| 治療カテゴリー | 代表的な選択肢 | 費用の目安(3割負担) | こんな人に向く | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | イブプロフェン、アセトアミノフェンなど | 数百円〜1,000円程度 | 月に数回程度の軽い頭痛 | 手軽に購入できる | 使い過ぎると薬物乱用頭痛のリスク |
| 処方の急性期薬 | トリプタン製剤(レイボーなど) | 1錠あたり数十円〜百数十円 | 市販薬が効かない片頭痛 | 発作時に速やかに痛みを抑える | 心筋梗塞や脳梗塞の既往がある人は使用不可 |
| 経口の新薬 | ナルティーク(リメゲパント) | 保険適用、詳細は医療機関に確認 | トリプタンが使えない人、予防もしたい人 | 血管収縮作用がなく安全性が高い | 発売されたばかりで情報収集が必要 |
| 予防の注射薬 | エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ | 月1回あたり1万2,000〜1万3,000円程度 | 月に5回以上頭痛がある人 | 発作の頻度と強さを大きく減らせる | 自宅での自己注射に慣れが必要 |
| 漢方・鍼灸 | 葛根湯、釣藤散など/鍼灸施術 | 漢方薬は月に数千円程度、鍼灸は1回あたり数千円〜 | 薬に頼りたくない人、体質改善したい人 | 副作用が少なく体にやさしい | 効果に個人差がある |
頭痛外来では、MRI検査で脳に異常がないかを確認することも重要です。健康保険の3割負担であれば、MRI検査の自己負担はおよそ6,000円〜7,000円が目安になります。初診の診察のみであれば2,000円〜3,000円程度で受けられます。
頭痛専門医にかかるタイミングと探し方
次のような症状がある場合は、早めに頭痛外来の受診を検討してください。
- 市販薬を飲んでも痛みが治まらない
- 月に10日以上鎮痛薬を使っている
- 手足のしびれや言葉の出にくさを伴う
- 今までに経験したことのない激しい痛みがある
受診先は、日本頭痛学会の専門医が在籍するクリニックが理想的です。「頭痛外来 〇〇市」や「頭痛専門医 最寄り駅名」で検索すると、通いやすい医療機関が見つかります。大阪なら脳神経外科の頭痛専門外来、東京なら大学病院の頭痛外来など、地域ごとに特徴があります。かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらう方法もあります。
診察では、頭痛の頻度や痛みの場所、誘因となる状況を伝えられるように、事前に記録をまとめておくとスムーズです。スマートフォンのアプリや手帳に、いつ、どのくらいの強さで、何をしているときに痛んだかをメモしておきましょう。
頭痛と上手に付き合うために
頭痛は我慢するものではなく、適切に対処できるものです。日本の医療現場では、薬物療法だけでなく、リハビリテーションや姿勢指導、生活習慣の改善を組み合わせた総合的なアプローチが広がっています。特にCGRP関連薬の登場で、長年片頭痛に苦しんできた人にも「頭痛のない日々」が現実のものになりつつあります。
まずは自分の頭痛のタイプを知ることから始めてみてください。症状が続くようであれば、専門医の力を借りるのも一つの選択肢です。頭痛を軽く見ず、早めの対処を心がけましょう。