あなたの頭痛、実は「片頭痛」かもしれません
頭痛とひと口に言っても、その正体は人それぞれです。日本で最も多いのは緊張型頭痛で、肩こりや目の疲れ、デスクワークでの姿勢の悪さが原因で起こります。頭の周りをベルトで締め付けられるような痛みが特徴で、市販の鎮痛剤が比較的効きやすいタイプです。
一方、片頭痛は血管の拡張と三叉神経の興奮が関わっており、ズキズキと脈打つような痛みに加えて、吐き気や光・音への過敏を伴うのが特徴。生理前後の女性に多く、気圧の変化や寝不足、ストレスからの解放(いわゆる「ホッとした瞬間」)で誘発されることもあります。さらに稀ですが、目の奥がえぐられるような激痛が数週間単位で繰り返す群発頭痛というタイプも存在します。
ここで注意したいのは、頭痛の大半は命に関わらない良性のものだということ。しかし、くも膜下出血や脳腫瘍といった重篤な病気が隠れているケースもゼロではありません。「今まで経験したことがないほど激しい痛み」「手足の麻痺やろれつが回らない症状を伴う頭痛」は、迷わず救急搬送を検討してください。
また、薬物乱用頭痛も近年増加しています。痛み止めを月に10日以上飲み続けると、薬が切れたときの反跳痛でかえって頭痛が悪化するという悪循環に陥ります。「市販薬の効きが悪くなってきた」「飲む量が増えている」と感じたら、一度医療機関で相談するタイミングです。
頭痛外来で何が変わるのか
「病院に行ってもMRIで異常なしと言われて終わり」——そんな経験を持つ方も多いでしょう。実際、多くの頭痛は画像検査では異常が見つかりません。だからこそ、問診と神経診察を丁寧に行う頭痛外来の存在が重要になります。
日本頭痛学会が認定する頭痛専門医は、頭痛ダイアリー(頭痛の記録)を使いながら、痛みの頻度、程度、誘因、随伴症状を詳細に分析します。頭痛インパクトテスト(HIT-6)という6項目の質問票で日常生活への支障度を数値化し、治療方針を決めるのも一般的な流れです。
治療の基本は急性期治療と予防治療の2本柱です。痛みが出たときに使うトリプタン製剤などの急性期薬に加えて、頭痛の頻度が高い場合は予防薬を併用します。ここ数年で大きく変わったのが、CGRP関連製剤の登場です。2021年に注射薬のエムガルティ、アジョビ、アイモビーグが保険適用となり、2025年12月には日本初の経口タイプ「ナルティーク」が発売されました。血管収縮作用が少なく、脳や心臓の血管に持病がある方でも使いやすいのが特徴です。
| 治療薬 | タイプ | 費用の目安(3割負担) | 特徴 | 向いている人 |
|---|
| トリプタン系 | 急性期(発作時) | 1錠数百円程度 | 即効性が高い | 発作頻度が低い方 |
| ナルティーク | 急性期+予防の両用 | 保険適用、処方薬 | 日本初の経口CGRP薬 | 注射に抵抗がある方 |
| エムガルティ | 予防(注射) | 1本1万2,000〜1万3,500円前後 | 効果の立ち上がりが比較的早い | 毎月1回の注射で管理したい方 |
| アジョビ | 予防(注射) | 同程度 | 3か月に1回のまとめ打ちも可能 | 通院回数を減らしたい方 |
| アイモビーグ | 予防(注射) | 同程度 | CGRP受容体をブロック | 作用機序の違う薬を試したい方 |
※費用は保険診療のため初診料・再診料・処置料が別途かかります。クリニックによって自己注射対応やオンライン診療の可否が異なるため、事前に確認しましょう。
今日からできる3つの対策
まず、頭痛ダイアリーをつけ始めてください。日本頭痛学会のサイトから無料でPDFをダウンロードでき、痛みの程度を3段階で記録し、使用した薬の名前と効果をメモします。月経期間や天気、睡眠時間も書き込むことで、自分の頭痛の誘因が明確になります。受診の際に持参すれば、診断の精度は格段に上がります。
次に、生活習慣の見直しです。片頭痛持ちの方に多いのが、空腹、睡眠不足、カフェインの過剰摂取、そして気圧の変化です。特に梅雨や台風シーズンは低気圧が血管を拡張させ、頭痛を誘発しやすいとされています。こまめな水分補給と規則正しい睡眠リズムを心がけ、デスクワーク中は1時間に一度は首や肩を動かすようにしましょう。
最後に、受診のハードルを下げることです。都市部の頭痛専門クリニックでは20時まで診療しているところや、オンライン診療に対応しているところが増えています。初診の予約はWebで完結する施設がほとんどで、会社帰りでも通いやすい環境が整ってきています。頭痛で休むより、予防で通う。その発想の転換が結果的に仕事のパフォーマンス維持につながります。
頭痛は「脳のSOS」を聞き逃さない
頭痛は我慢するものではなく、適切にコントロールするものです。日本で頭痛に悩む4,000万人のうち、専門医を受診している人はごく一部にすぎません。「痛み止めを飲めばいい」で終わらせず、一度頭痛外来で自分の頭痛のタイプを診断してもらいましょう。診断がつけば、市販薬よりずっと効果的な治療の選択肢が見えてきます。まずは頭痛ダイアリーを1週間つけてみることから始めてみてはいかがでしょうか。